インプラント周囲炎
専用サイト東京 歯周病専門医 福嶋歯科医院監修
インプラント周囲炎治療なら多摩市永山の歯医者「福嶋歯科医院」|【症例・手術動画】インプラント周囲炎で3本中1本を撤去し、2本を再生療法で残した70代女性
- インプラント周囲炎治療なら「福嶋歯科医院」TOP>
- 症例・コラム>
- 症例>
- 【症例・手術動画】インプラント周囲炎で3本中1本を撤去し、2本を再生療法で残した70代女性
【症例・手術動画】インプラント周囲炎で3本中1本を撤去し、2本を再生療法で残した70代女性
「インプラントの1本がダメになったら、ほかのインプラントも全部やり直しになるの?」 インプラント周囲炎と診断された方から、よくいただく質問です。今回ご紹介するのは、左下の奥歯に3本のインプラントが入っていた70代の女性の症例です。股関節の手術を控え、整形外科の担当医から「口の中の感染源をきれいにしてくるように」と言われたことがきっかけで来院されました。3本すべてにインプラント周囲炎がありましたが、1本だけを撤去し、残りの2本は治療して残しました。 実際の手術の様子も、約3分の動画でご覧いただけます。
結論:インプラント周囲炎が複数のインプラントに起きていても、全部を撤去する必要があるとは限りません。1本ずつ骨の残り方や炎症の程度を調べ、残せないものだけを撤去し、残せるものは「除染」と「骨の再生療法」で治療する方法があります。
この症例のポイント
- 3本とも周囲炎でも、1本ずつ「残せるか」を判断した
- 残す2本は、機械的・化学的な除染と骨の再生療法を同じ日に行った
- 撤去と治療を1回の手術でまとめて行い、通院の負担を減らした
- 撤去から縫合までの手術の流れを、実際の動画で公開
目次
- 患者さんの状態
- なぜ「1本は撤去、2本は残す」と判断したのか
- 動画で見る治療の流れ
- 論文から見る、この治療の効果と限界
- 症例の概要(費用・期間・リスク)
- よくある質問
- まとめ:こんな方はご相談ください
1. 患者さんの状態
| 年齢・性別 | 70代 女性 |
|---|---|
| 部位 | 左下の奥歯(小臼歯1本・大臼歯2本)のインプラント3本 |
| 経緯 | ほかの医院で入れたインプラント(埋入からの年数は不明) |
| 主な症状 | 股関節の人工関節置換手術を受けるにあたり、整形外科の担当医から「口の中の感染源をきれいにしてくるように」と言われた。インプラントが多く、ご自身でもインプラント周囲炎の自覚があったため、ご自分で調べて当院を受診された。 |
| 検査結果 | 3本ともインプラント周囲炎。そのうち1本は、インプラントにぐらつき(動揺)があった。 |

治療した部位のX線写真(左:治療前、右:治療後)。3本のうち1本を撤去し、残した2本で噛めるようにしています。
2. なぜ「1本は撤去、2本は残す」と判断したのか
インプラント周囲炎の治療では、「全部残す」か「全部やり直す」かの二択ではありません。同じ方の口の中でも、インプラントごとに骨の残り方や炎症の強さは違います。そのため当院では、1本ずつ次の点を確認して、残せるかどうかを判断しています。
- 骨がどのくらい残っているか(X線写真)
- インプラントがぐらついていないか
- 骨の欠け方が、再生療法で骨を回復させやすい形か
- 治療したあとに、ご自身で清掃しやすい状態にできるか
この方の場合、1本はインプラントがぐらついていたため、撤去を選びました。インプラントがぐらつくのは、骨との結合が失われているサインで、治療しても元に戻すことは期待できません。一方、残りの2本はぐらつきがなく骨との結合が保たれていたため、除染と再生療法で治療して残すことにしました。 撤去の判断基準については「インプラントを撤去(除去)する方法と器具」、残せる可能性については「インプラント周囲炎は治る?治らない?」でも詳しく解説しています。
3. 動画で見る治療の流れ
動画が再生されない場合は、YouTubeでご覧ください(手術映像のため、年齢確認が求められることがあります)。
※手術の映像が含まれます。苦手な方は、下の文章と表で流れをご確認ください。
動画の見どころ(約2分48秒)
| 時間 | 映っている処置 |
|---|---|
| 0:05〜 | 残せないと判断した1本のインプラントを撤去 |
| 0:36〜 | 残す2本の表面を、チタン製のブラシでこすって除染 |
| 1:01〜 | EDTAという薬剤で、表面を化学的に除染 |
| 1:20〜 | 骨が溶けた部分に、骨補填材(Bio-Oss)を詰める |
| 1:50〜 | 骨補填材の上を、メンブレン(吸収性の膜)で覆う |
| 2:19〜 | 歯ぐきを縫い合わせて終了 |
撤去と2本の治療は、1回の手術でまとめて行いました。流れは次のとおりです。
① 1本のインプラントを撤去(動画 0:05〜)
残せないと判断したインプラントを撤去しました。周りの骨をできるだけ残すように撤去することで、その後の治療の選択肢を広げます。
② 残す2本を「こすって」除染(機械的な除染/動画 0:36〜)
歯ぐきを開いて、インプラントの表面を直接見ながら、チタン製のブラシで細菌の膜(バイオフィルム)をこすり落とします。インプラントのねじ山の溝に入り込んだ汚れは、通常の器具では落としにくいためです。
③ 薬剤で「洗って」除染(化学的な除染/動画 1:01〜)
ブラシで落としたあと、EDTAという薬剤をインプラントの表面に作用させて、残った汚れを化学的に取り除きます。こする方法と洗う方法を組み合わせることで、表面をできるだけきれいにすることを目指します。
④ 骨補填材を詰める(再生療法/動画 1:20〜)
骨が溶けてなくなった部分に、骨のかわりになる材料(骨補填材:Bio-Oss)を詰めます。骨補填材は、新しい骨ができるときの「足場」になり、時間をかけて自分の骨に置きかわっていきます。
⑤ メンブレン(膜)で覆う(GBR/動画 1:50〜)
詰めた骨補填材の上を、メンブレン(OSSIX VOLUMAX)で覆います。メンブレンには、治りの早い歯ぐきの細胞が骨の場所に入り込むのを防ぎ、骨ができるためのスペースを守る役割があります。この方法をGBR(骨誘導再生法)といいます。今回使ったメンブレンはコラーゲンでできた吸収性の膜で、体の中で少しずつ吸収されるため、取り出すための手術は必要ありません。
※使用した材料については「症例の概要」の下で詳しく説明しています。
⑥ 歯ぐきを縫い合わせて終了(動画 2:19〜)
最後に歯ぐきを元の位置に戻して縫い合わせます。骨補填材とメンブレンがしっかり覆われるように縫い合わせることで、傷口が開いて材料が出てくるのを防ぎます。
使用した主な器具・材料
| 工程 | 器具・材料 | 役割 |
|---|---|---|
| 撤去 | インプラント撤去用の専用器具 | 周りの骨をできるだけ削らずにインプラントを外す |
| 機械的な除染 | チタンブラシ | ねじ山の溝の汚れ(バイオフィルム)をこすり落とす |
| 化学的な除染 | EDTA | 表面に残った汚れを薬剤で取り除く |
| 骨の再生 | Bio-Oss(骨補填材) | 新しい骨ができるための足場になる |
| 骨の再生 | OSSIX VOLUMAX(吸収性メンブレン) | 歯ぐきの入り込みを防ぎ、骨ができるスペースを守る |
4. 論文から見る、この治療の効果と限界
ここからは、今回の治療に関係する研究データを、できるだけ分かりやすくご紹介します。
骨補填材を使うと、骨の回復は期待できる
骨の壁が残っている欠損に、歯ぐきを開いて清掃するだけの治療と、骨補填材を加える治療を比べた研究があります(Renvert 2018、41名)。1年後に治療のゴール(骨の回復1mm以上・ポケット5mm以下・出血と膿なし)を満たした方は、清掃だけでは5.0%、骨補填材を加えると42.9%でした。 別の研究(Jepsen 2016)でも、骨補填材を使ったグループは、X線で見た骨の回復が平均3.6mm(清掃だけのグループは約1mm)でした。
ただし「完全に治る」とは限らない
同じJepsen 2016の研究では、炎症が完全に消えた割合は、骨補填材を使っても30%(使わない場合23%)で、はっきりした差はありませんでした。骨補填材は骨を取り戻すことには役立ちますが、それだけで炎症がすべて消えるわけではありません。
除染の方法に「これが一番」はまだない
インプラント表面をきれいにする方法はいくつもありますが、どれか1つが特に優れているという結論は出ていません。7年間の追跡研究(Schwarz 2017)でも、除染の方法の違いは長期の結果に影響しなかったと報告されています。そのため当院では、こする方法(チタンブラシ)と洗う方法(EDTA)を組み合わせています。
長く守るには、治療後のメインテナンスが欠かせない
EDTAでの除染と骨補填材による再生療法を行い、その後も定期的なメインテナンスを続けた30名を10年間追跡した研究(Mercado 2026)では、30本中29本のインプラントが10年後も残っていました。一方で、治療のゴールを満たし続けていたのは約6割でした。
| 研究 | 分かったこと |
|---|---|
| Renvert 2018 | 骨補填材を加えると、1年後の治療成功が5.0%→42.9% |
| Jepsen 2016 | 骨の回復は平均3.6mm。ただし炎症の完全な消失は30% |
| Schwarz 2017 | 除染の方法の違いは、7年後の結果に影響しなかった |
| Mercado 2026 | 再生療法+メインテナンスで、10年後もインプラントの96.6%が残存 |
つまり、再生療法は「骨を取り戻し、インプラントを残す可能性を高める治療」です。そして、その効果を長く保つ鍵は、治療後のメインテナンスにあります。メインテナンスについては「再発防止のメインテナンス方法」をご覧ください。
5. 症例の概要(費用・期間・リスク)
| 症例の概要 | |
|---|---|
| 患者さん | 70代女性(左下の奥歯のインプラント3本) |
| 主な治療内容 | インプラント1本の撤去、2本のインプラント周囲炎の外科治療(チタンブラシとEDTAによる除染、骨補填材〈Bio-Oss〉とメンブレン〈OSSIX VOLUMAX〉を用いた再生療法) |
| 治療期間 | 手術は1回。術後は傷の確認と抜糸のために数回通院し、その後は定期的なメインテナンスに移ります。 |
| 費用(自由診療) | 合計374,000円(税込) 内訳:インプラント撤去(1本)121,000円(税込)、インプラント周囲炎治療(2本・再生療法を含む)253,000円(税込) ※メインテナンスの費用は別途かかります。 |
| 主なリスク・副作用 | 手術後の腫れ・痛み・内出血、歯ぐきが下がること、骨補填材やメンブレンの露出・感染、骨が期待どおりに回復しない可能性、インプラント周囲炎の再発、残したインプラントも将来撤去が必要になる可能性。骨補填材には動物(牛)由来の材料を使用しています。使用した材料・薬剤の詳細は下記をご覧ください。 |
使用した材料・薬剤について
メンブレン(OSSIX VOLUMAX)
- 医薬品医療機器等法上の承認を受けていない医療機器です。
- 入手経路:当院医師の判断のもと、個人輸入により入手しています。
- 国内の承認医療機器等の有無:インプラント周囲炎の治療を目的として国内で承認されたメンブレンは、現在のところありません。
- 諸外国における安全性等の情報:米国(FDA 510(k))、カナダ、オーストラリアで医療機器として認可・登録されています。考えられるリスクは、上の表の「主なリスク・副作用」をご覧ください。
除染に用いた薬剤(EDTA)
- 国内で流通している歯科用のEDTA製剤を使用しています。インプラント周囲炎の治療に用いることは、承認された用途に含まれていません。
- 入手経路:国内の歯科材料販売業者から購入しています。
- 国内の承認医薬品等の有無:インプラント周囲炎の治療を目的として国内で承認された同様の薬剤は、現在のところありません。
- 諸外国における安全性等の情報:海外の臨床研究でも、インプラント周囲炎の外科治療の除染に用いられています(参考文献4)。
6. よくある質問
Q. 1本だけ撤去して、ほかのインプラントは大丈夫なのですか?
A. インプラントは1本ずつ骨と結合しているため、状態の悪い1本だけを撤去することができます。ただし、残したインプラントも周囲炎の治療をしたうえで、定期的な検査で状態を見守ることが大切です。
Q. 撤去したところはどうなりますか?
A. 骨の回復を待って、骨造成と新しいインプラント、ブリッジ、入れ歯などから、ご希望と状態に合わせて選んでいただけます。詳しくは「インプラントを撤去する方法と器具」をご覧ください。
Q. 手術は痛いですか?
A. 局所麻酔で行うため、手術中の痛みはほとんどありません。術後の腫れや痛みは数日〜1週間ほどで落ち着くことが多く、痛み止めをお出しします。
Q. 再生療法をすれば、溶けた骨は必ず元に戻りますか?
A. 必ず戻るわけではありません。論文では、骨補填材を使うとX線で見た骨の回復が期待できる一方、炎症が完全に消えるのは3割ほどと報告されています(論文から見る効果と限界)。骨の欠け方が再生療法に向いているかどうかを、CTやX線で確認したうえでご提案します。
Q. 費用に保険は使えますか?
A. インプラントの撤去とインプラント周囲炎の外科治療は自由診療です(この症例では合計374,000円〈税込〉)。
Q. 治療後はどのくらいの間隔で通院しますか?
A. 再発を防ぐため、治療後も定期的なメインテナンスが欠かせません。お口の状態に合わせて、1〜3か月ごとを目安にご案内しています。
Q. 人工関節などの手術の前に「口の感染源を治して」と言われました。インプラントも対象ですか?
A. 対象になります。インプラント周囲炎は、インプラントの周りに細菌が感染して骨が溶けていく病気です。ぐらつきや膿がある場合は、手術日から逆算して早めに検査を受けてください。手術の日程が決まっている方は、ご予約の際にお伝えいただければ、治療の進め方を相談しながら計画します。
Q. ほかの医院で入れたインプラントでも相談できますか?
A. はい、ご相談いただけます。インプラントのメーカーや種類が分かる資料(インプラントカードなど)があればお持ちください。セカンドオピニオンも承っています。
7. まとめ:こんな方はご相談ください
インプラント周囲炎は、早く見つけるほど、残せるインプラントが増える病気です。次のような症状がある方は、一度検査を受けてください。
セルフチェック
- □ インプラントの周りの歯ぐきから血が出る
- □ 歯ぐきが腫れている、むずむずする
- □ インプラントの周りから膿が出る、口の中が臭う
- □ 歯ぐきが下がって、金属が見えてきた
- □ 半年以上、歯科でインプラントの検査を受けていない
1つでも当てはまる方は、早めの検査をおすすめします。
あわせて読みたい
- 【症例】自覚症状のないまま進行したインプラント周囲炎|埋入10年後に抜去を選んだ理由
- 【症例】30代のインプラント周囲炎を外科治療した症例
- インプラント周囲炎の原因とは?なりやすい人の特徴
- インプラント周囲炎の発症率・確率
執筆・監修:福嶋歯科医院 院長 福嶋太郎(日本歯周病学会 歯周病専門医)
東京都多摩市で、歯周病とインプラント周囲炎の治療に取り組んでいます。インプラントの撤去・周囲炎の外科治療・再生療法まで院内で行い、ほかの医院で入れたインプラントのご相談も承っています。
参考文献
- Renvert S, et al. Surgical treatment of peri-implantitis lesions with or without the use of a bone substitute—a randomized clinical trial. J Clin Periodontol. 2018;45(10):1266-1274.
- Jepsen K, et al. Reconstruction of peri-implant osseous defects: a multicenter randomized trial. J Dent Res. 2016;95(1):58-66.
- Schwarz F, John G, Schmucker A, Sahm N, Becker J. Combined surgical therapy of advanced peri-implantitis evaluating two methods of surface decontamination: a 7-year follow-up observation. J Clin Periodontol. 2017;44(3):337-342.
- Mercado F, Ivanovski S. Surgical therapy for peri-implantitis using deproteinised bovine bone mineral with 10% collagen, enamel matrix derivative and doxycycline: a prospective cohort 10-year implant study. J Clin Periodontol. 2026;53(10):1575-1584.
- Herrera D, Berglundh T, Schwarz F, et al. Prevention and treatment of peri-implant diseases—The EFP S3 level clinical practice guideline. J Clin Periodontol. 2023;50 Suppl 26:4-76.